滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
その時、彼が優しく私の額に自らの額をコツンとぶつけてきた。
お互いの息遣いが感じられるぐらい顔が近くて、
私はドキドキさせながら赤面して彼を見つめた。
「財布が元カレからもらった大切なものだって聞いたとき、すげえムカついて、めっちゃ嫉妬した。だからわざと返さなかった。奈緒子さんを困らせたかったんだよ」
そういう彼の頬がほんのり赤いのは気のせいだろうか。
口を尖らせ、すねる様に小さくか細く呟いて。
「奈緒子さんに会ってから、頭ン中奈緒子さんのことばかり考えてて、悔しいぐらいずっと…」
秘めていた今までの気持ちをストレートに伝えてくる彼に、
私は黙ってその言葉を聞くことしか出来ない。