赤い流れ星




「綺麗で良い所だね!
畑も思ったより広いね!」

「そうだな……」



次の日、兄さんが車を借りてきて、私達は情報誌にあった物件を見て回った。
不動産屋さんに行く前に、やはりあたりの環境を見ておいた方が良いという兄さんのアドバイスに従って、半分観光気分で私達はドライブを楽しんだ。
車があるとこんなに便利だったんだとあらためて感じ、私も近い将来、免許を取りたいと思った。
シュウは取れないから、何かあったの時のためにも、やっぱり私が免許を取るべきだ。

中心地から少し離れると、これほど変わるのかと驚くくらい、町の景色は一変した。
おばあちゃんの田舎の雰囲気にとてもよく似ている所もあって、そのことが妙に気持ちを和らげてくれた。
だけど、シュウの様子は相変わらずで、どこげ行っても返って来るのは気のない返事ばかりだった。
兄さんもそのことには気付いてるようだったけど、かといって特になにかを話すことはなかった。
きっと、兄さんもシュウの気持ちを尊重してくれてるんだと思う。

朝から夕方まであちこちを見回って、私達はある地域を気に入り、そのあたりで家を借りることをほぼ決定して、その晩はその近くの小さな民宿に泊まることになった。



「かなり古い民宿だねぇ…」

「別に良いじゃないか。
近くに泊まってた方が、明日からの行動がしやすくなる。
それに、料理はけっこううまかったじゃないか。」

「ま、確かにね。」

部屋は二間続きになっていて、襖で仕切られる。
兄さんは、一応、気遣ってくれて、兄さんとシュウが同じ部屋、私は隣の部屋で寝るように言われた。
早くから出歩いていたから、私はけっこう疲れていて……瞼が重くなりながら、兄さん達と一緒に部屋で寛いでいた時、不意に兄さんの携帯が鳴った。



「……父さんだ。」

「出ない方が良いよ!」

今、電話に出たって答えようがない。
兄さんに嘘を吐かせるのも困らせるのもいやだから、私は兄さんの腕を掴んだ。
兄さんは着信音の鳴り続ける携帯をみつめてたけど、結局は出なかった。



「……もう家にいないことに気付いたのかな?」

留守電が入ってたので聞いてみると、明日行くと言う父さんからのメッセージが残されていた。



「ついに明日バレるか……」

部屋の中に重苦しい空気が流れた。
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