赤い流れ星
「十年経てば、おまえがこの世界で年をとるかとらないかもはっきりとわかるだろうし、その頃には美幸だって良い年になってる。
その時まであいつの気持ちが変わらなければ、それはもう疑いのない程、本当の愛情だとは思わないか?
だから…もし十年後にもあいつの気持ちが変わってなければ、そして、おまえの気持ちも変わっていなければ、その時はおまえも観念してあいつをもらってくれ。」

「和彦さん……」

「頼むぞ!」

俺は、親しみを込めてシュウの腕を叩いた。
シュウは、俺の顔をじっとみつめ…そして、ようやく頷いた。



「ありがとう、
おまえの居所を知ってることは俺は誰にも絶対に話さないから信用してくれ。
明日は、美幸と二人で楽しい時間を過ごしてやってくれ。
いつまでも思い出に残るようなうんと楽しい時間をな。
そして…あさっての朝、おまえはここを出て行ってくれ。
俺は、美幸を連れて家に戻る。
そして、もう一度戻って来ておまえの住む場所を決めよう。
……その後は、おまえの自由だ。」

「ありがとう、和彦さん。
あなたには言葉では言い尽せない程、お世話になってしまいましたね。
いや、これからずっと長い間、世話をかけてしまう…
……俺が元の世界に戻れればこんな苦労はしなくてすむのに……」

そう呟いたシュウの横顔はとても苦しげなものだった。



「カリスタリュギュウス流星群が来るのはまだまだ先だから、残念ながらそれは無理だな。」

俺の下手な冗談に、シュウは苦笑いを浮かべた。



「そんなことよりシュウ…馬鹿な真似だけは絶対にするなよ。」

「……もちろんですよ。
どんな辛いことがあったって、俺はそんなことはしません。」

「頼むよ。
もし、そんなことになったら……美幸は、自分がおまえをこっちの世界に呼んだせいだって苦しむ。
おまえの後を追うかもしれないんだからな。
おまえの命はおまえだけのものじゃないってこと、しっかり覚えといてくれよ!」

「わかっています。」

俺の言葉に、シュウは真っ直ぐな瞳で深く頷いた。
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