赤い流れ星
昨夜は横になったものの、明日、父さん達に家にいないことがバレると思うとなかなか眠れなかった。
でも、兄さんに心配かけるのもいやだったから、私は布団の中で目を瞑ってじっとしてた。
そのうち、シュウと兄さんの声が聞こえて来て……
私は全神経を耳に集中して、二人の話に聞き入った。
聞いてるうちにも私の鼓動はどんどん速さを増して、心の中は不安が大きく渦巻いた。
シュウの様子がおかしいことは気付いていたけど、そんなことを考えてたなんて……
……ものすごくショックだった。
でも、そんなに私のことを考えてくれてるんだと思うと、感動して胸が熱くなり、私は声を出さないように懸命に我慢した。
兄さんがシュウの言い分を聞いたのは、きっとシュウはどんなに説得しても考えを変えないと思ったからだろう。
私にもシュウの決意の固さは痛い程感じられた。
シュウの決意はきっともう変わらない……
……でも、それでもやっぱり私はシュウとは別れたくない。
十年もの長い間、シュウと離れて暮らすなんて辛過ぎる。



私は一晩かけてじっくりと考えた。
どうすれば良いのか……
私には何が出来るのか……
そして、明け方になってようやく一つのアイディアを思い着いた。
成功率は低そうだけど、私はそれを実行してみることに決めた。
失敗したらまた次の手を考える。
何にでも方法なんていくつでもあるんだから。
何度でもやり直せば良いんだから。
私はシュウのためなら、なんだって出来る。
ちょっとしたことですぐに塞ぎこんだり諦めたりする以前の私とは違うんだ。

私の心はもう揺らがない。
どんなことがあっても、シュウを諦めることはしない。



(たとえ、どの方法も失敗して十年後に会うことになったとしても、私の気持ちは変わらないから……)



「……ひかり…どうかした?」

「えっ!?い、いや、なんでもないよ。
あ、あのさ、夕ご飯、何食べようか?
素敵なお店がたくさんあって迷うじゃない。」

私は咄嗟にそんな嘘を吐いて、誤魔化した。



「なんだ…そんなこと考えてたのか。
俺はなんでも良いよ。
ひかりの好きなものにしよう。」

「シュウも考えてよ。
私さっきから考えてるのに、たくさんありすぎて決められないんだから。」

私はわざと明るく答えた。
シュウも私も、そして兄さんも今日は三人共無理をして、作り笑顔を絶やさない。
皆、自分の本当の気持ちを隠してた。
< 159 / 171 >

この作品をシェア

pagetop