白薔薇と黒薔薇
「兄様………

なんでなのかな?

私達は世界を救いたいと願っていた。いつもいつも、そのために過ごしていた。

兄様は辛い穢れた仕事をこなしていて、私は暗い宮廷でもお母様と懸命に明るく過ごそうとしたわ。

使命は反乱者達を殺し、世界の平和を守ることだった………

正しいって訳ではないでしょう、人を殺めるのだから……

でもそれで世界が幸せになるって信じていたわ。

なのに……反乱者達は増え、終いには私達を殺すといって襲ってきた。

結局私達は、上のもの達の命令に従って下のもの達を殺していた。

それは正しいと言い聞かせて、

間違っているのではないかなど、考えもしなかった。

ここまで人々を邪悪な闇に叩き落とすまで気がつかないのだから……」


大きな母譲りの瞳からは大量の涙がこぼれていた。

となりにはまるで眠ったように横たわる母の姿。


「何故こんな事考えてしまうのかしらね?

ねぇ、兄様………」


ばっと、黒夜の手を掴んだ。
その手に力が入る。


「黒夢!?何をする気だ!」


黒夜の立つ場所が光りだした。


「わからないわ。だけどこのままじゃ嫌なの………

何をいってるのかな?

兄様、さっき白音の事考えていたでしょう?

心配なんでしょう?

なら、行ってください。」


真っ赤な瞳は優しく光る。
いつになく穏やかな表情

まるで何かを悟ったような…


「馬鹿言うな!!大事な妹を残して行けるわけがないだろう?

それに俺は黒薔薇だ、
俺達は俺達でなんとかしなければ……」



「馬鹿は兄様よ……

最後くらい愛するものといたいじゃない………

そうでしょう?

兄様の心にあるのは誰?
私は間違っていないわ、だって兄様は幸せって感じで笑うじゃない。

白音は太陽ような人だって………

私もそう思うもの、

ならば彼女を守ってあげて………」


ふんわり優しく微笑んだ。

黒夜の瞳からも涙が流れた。
強く光り出す。


「黒夢………

「大好きよ兄様………

お願い、兄様の大好きな人を守って?」





最後に見たのは泣きじゃくりまるで幼い子供のような兄。

転送魔法ですっと姿が消えた。


何故こんなことをしたのかなんてわからないけれど、
何故かそれが正しいと感じた。


☆貴方がするべき事をして、

それが正しい道となるーーー。☆


頭に響いたこの声は一体何だったのかしら?


ガクッ!

足に力が入らずその場にしゃがむ、かなりの力を使ったためにもうほとんど魔力が残っていない。
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