竹林パラドックス
竹林の中をゆるゆると道なりに進む遊歩道でスンと吸い込むと、神聖な空気が肺まで伝わります。


雨の日にわざわざ南天満山に登る輩はそうそういません。


なので少し前から男女が下山してくるのを見たときは、多少驚きました。


わたしとすれ違い様、美しい女性が隣に並ぶ男性のケツを蹴っ飛ばしたときには、大変驚きました。


・・・雨の日に古戦場でデートした挙げ句、喧嘩に発展したのかしら。

・・・まさかの合戦ごっこ?


・・・とどめを刺すなら、蹴っ飛ばすのは後ろより前よね。


わたしは話し相手もなかったので、下世話なことを想像しながら歩き続けました。


「さっきのは合戦ごっこじゃのうて、単なる痴話喧嘩じゃ」

「なるほど・・・・っギャア!!」

いつの間にか、わたしのとなりに天狗が歩いていました。


こざっぱりした山伏装束の天狗は、高下駄をカタカタ鳴らして歩いています。
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