ふたりのガーディアン
夜の海は暗く、波の音も大きくて、私は急に怖くなって来た。


自分の身体を、自分でぎゅっと抱きしめる。


止め処もなく、涙が溢れてくる。


「瀬名君、瀬名君っ…」


さっきまで触れていた唇の温度を求める。


でもその感覚は、今にも消えて無くなりそうだ。


思い出すのはただ、瀬名君の笑顔と、楽しかった日々のことばかり…。


食べるのが遅い私を、いつもさりげなく待っていてくれる瀬名君。


私に似合う髪型を、アドバイスしてくれた。


生まれて初めてデートをしたのも瀬名君だった。


後ろに乗ったバイク。


初めてのキス。


寝ぼけた瀬名君が言った本音。


そして、さっきの告白。


瀬名君が、私の前からいなくなっちゃうなんて!


苦しいよ、瀬名君。


こんなに瀬名君の存在が大きかったなんて!


「瀬名君…」


私はしばらくそこから動けず、飲み込まれそうなくらい真っ黒な海をいつまでも見ていた。
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