ふたりのガーディアン
「ちょっと待ってください。

あの、一年前の夏。

樋口さんは一度田舎に帰ろうとしたことがあったはずなんですが…」


瀬名君が突然口を挟んだ。


そうだ。


薫さんは何も目標が無くなってしまって、田舎に帰ろうとしていた。


それを、瀬名君が止めたんだもの。


「えっ?そ、それは絶対にないです。

姉は地元に帰るつもりなんて、さらさらありませんから」


「で、でも俺、本人から聞いたんです。

田舎に帰るって。

この子も一緒に聞いてました。

だよな?優月」


「瀬名君…」


妹さんは、有り得ないという顔をしている。


「姉は私にはよくメールをくれるので、大体の事は知っています。

去年の夏ですよね?

そんな話は一度も出ていません」


妹さんの口ぶりからして、間違いじゃなさそうだ。


だとしたら薫さんはあの時、やっぱり嘘を…?


「あの…。お姉さんとそれだけ密に連絡を取っているのに、今日様子を伺いに来たのはどうしてなんですか?」


瀬名君の不安そうな顔を見つつ、私は妹さんに聞いてみた。


「実は…、両親が一緒にこっちに来てるんです。
もう3年以上も会ってないので、どうしても会いたいと言って…」


そう、だったんだ…。


「でも、姉は両親には会いたくないと言って、それでさっきあんなに怒ってたんです…」


薫さん、ひどく怒鳴ってた。


あれは、そういう理由があったからなんだ…。

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