和田菜月物語
麻子は家に向かった。

「お母さん…。お父さん…」

麻子は3人の写真を見て静かに泣いた。
その涙は結晶の様に綺麗だった。

「どうしてなの…。どうしてよ!?」

麻子は机やイスを投げた。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

部屋には麻子の叫ぶ声だけが響いた。

そして最悪な夜は終わった。


朝、目覚めた時

「何でこんなに散らかってるんだろう?」

何も覚えていなかった。
そう『麻奈』は何も覚えてなかった。

「学校行かなきゃ…」

麻奈は立ち上がろうとしたが、
倒れてしまった。

そして立ち上がった。

「学校なんて行くかよ…」

不機嫌そうな顔をして
麻子は部屋を出た。

その時電話が鳴った。

【プルルルル】

「またかよ…」

麻子はもっと不機嫌になった。

「もしもし」

その声は誰から聞いても不機嫌だった。
電話の相手は少し驚いたのか

【用事中でしたか!?】

と、少し申し訳なさそうだった。

「いいえ。まったくです」

麻子は冷静に対応した。
その言葉を聞いてホッとしたのか
声が明るくなった。

【私よ!覚えてる!?】

「はっ?」

【私よ!麻弥!】

「えっ…。え――!」

麻弥は麻奈(麻子)の従姉。
1人暮らしをしている。

この電話が無かったら
きっと不幸は終わらなかった。

そして春樹と出会う事も無かった。
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