和田菜月物語

亮磨×前田

「じゃあ話すな…」


この話は前田と大川が5年の時。
二人は前田が転入して来て出会った。

「前田小太郎です。お願いします」

それが初めて前田がみんなの前で話した言葉。
それまで何も言わずに先生に紹介されるのを待っていた。

そこから前田は静かに過ごしていた。
何言われても歯向かわない。
頭もよく運動も出来た。

前田の家は金持だった。
家でもいつも一人だったらしい。

母親は前田に別荘を建てた。

「大きくなったらここに住みなさい」

そう言われるのが当たり前だったらしい。
けどその家は一人暮らしするには大きすぎる家だ。

だから前田はそこに行くのは嫌だった。
前田は人には隠してるが人一倍寂しがりだからだ。

その金持や賢さが女子からは好評だったが、男子からは批判を受けていた。
そして転入してからいじめられるようになった。

「お前なんか死ねばいいんだよ!!」

「うざい」

「消えろよ」

ノートに毎日書いてる言葉。
でも前田は何も言わなかった。

その前にクラスで一言も話した事が無い。

それに気付いたのが大川だ。

「なぁなぁ前田!!一緒にバスケしようぜ!!」

毎日それを言い続けた。
前田は無視しするのがめんどくさくなったらしい。

「もう!!うっとしい!!何だよお前!!人が静かに過ごしたいって思ってるのに!!何で毎日俺に関わる!?俺は誰とも関わらないって決めてるんだよ!!関わった人を不幸にするのはもう嫌なんだよ!!」

前田は息を切らして話した。

前田は昔、父親と山に行った時に崖から落ちそうになった。
それを父親がかばって亡くなってしまった。
それから前田はずっと自分を責めている。
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