和田菜月物語
「ごめん!!」

「…は?」

ウチはいきなり頭を下げてきた畑山に首を傾げた。

「いきなりどうしたのさぁ?」

「俺…聞いちゃったんだ…。その…あの…」

「雅木の事…?」

「えっ…?」

ウチはため息をこぼした。

「知ってたし。ってか嘘下手だし畑山」

ウチは「ははっ」と笑って歩き始めた。

「何で笑ってるんだよ!!」

そう言って畑山はウチの手を握った。

「…何?離してよ…。痛いし…」

「何で笑ってる!!何で普通なんだよ!!何で感情を表にしないんだよ!!悲しいなら、悲しくしろよ!!ムカつくなら怒れよ!!」

畑山はウチを自分の方に向かせた。

「泣きたいなら、泣けよ!!」

そう言ってウチの手を離した。
ウチは黙っていた。

感情を出せば傷つく人が出る…。
心友を裏切る事になる…。

そんな事出来るわけないじゃん…。

「出来ないに決まってるじゃん。そんな事」

ウチは笑って歩きながら言った。

「何でだよ!!誰もお前を責めないぞ!!」

ウチはその言葉に動きを止めた。

『責めない』

そんな事…。

「何であんたにわかるのさ!!何もわかってないあんたに!!ウチだって!!ウチだって…」

話してるうちに頭の中で色んな事が流れ出した。
そしていつの間にかウチは泣いていた。

「…ひっく…ばぁかぁ…」

畑山は泣いてるウチを抱きしめた。

「俺は昔から中井が飯沼の事が好きだった事知ってたよ」

「えっ…?…ひっく…」

「だって俺は…」

畑山は真剣な顔をした。
そして一度息を吐いてからこう言った。

『中井が好きだから』
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