パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
「時間になったら勝手に行くから。あんまりしんどいようなら電話して。無理すんなよ」


チン!とトースターの音が響く。
すかさず奈桜がパンを取り出す。
ようやく動きが早くなって来たようだ。
梓と結婚してからの奈桜は家ではだらだらとしている。
それは完全に甘えているから。
ゆっくり動けば梓が手伝ってくれる。
それが嬉しくて仕方ない。
横に大好きな人を感じられる幸せ。
それを味わうのが奈桜の至福の時。


「ごめんね。なんか……またちょっと気分悪い。ごめん。休ませてもらうね」


胸の真ん中辺りを軽くさすりながら少し辛そうな顔をする。
でも、精一杯笑って見せた。
それがまた奈桜には健気に見える。


「な、なんか変なもん食った?賞味期限切れのとか。あっ、胃腸風邪?あれはしんどいぞ。病院行こ。やっぱり今から行こ!」


梓の腕を引っ張って今にも連れ出しそうな奈桜を、笑って落ち着かせる。
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