UNDER SKY
朝靄に

前田 慎side


行きたくない。

起きた途端、脳が訴えた。
体もそれに同意したかのように動かない。

俺だって行きたくないさ。

意思に反発する体を無理やり起こし、ベッドから出る。

「寒・・・」

つい最近まで夏だと思っていたのに、もう秋だ。
衣替えしなくちゃな。と思いつつ重い足を一歩一歩踏み出す。

冷たい水で顔を洗い、鏡にうつった自分の顔を見て昨日のことを思い出す。

仕方がなかった。で、かたづけられないことだった。
つい、得意先の社長に怒鳴ってしまったのだ。
相手が怒りやすい性格って分かっていたのに。
一緒にいた課長にも迷惑をかけた。
もちろん会社には損害を与えてしまった。
最初は、自分が正しい。なんてバカな考えがあったが、帰った後の他の社員の憐みの目と、先輩からの蔑むような視線から、初めて自分がしでかした事の重大さに気がついた。
確かに、自分は正しかったかもしれない。
でもここは日本社会だ。
主張が激しい奴は嫌われる。

結構いい道だったのに。
ふみはずしたな。

スーツを着て、まだ反抗する体に鞭打って家を出る。
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