もう一度抱いて
「永瀬。今日は息抜きしろ」


そう言って、私と相原君が座っているベンチに近づくキョウセイ。


「息抜きって言われても…」


「根詰めても、アイデアは出て来ないぞ。
ちょっと山に散歩にでも出かけるか?
俺、付き合ってもいいよ」


え…?


ホントに…?


「それ、ええなあ。
俺も行くー」


可愛い顔で嬉しそうに笑う相原君。


「お前はダメだ」


「はっ?なんでやねん」


「Eマイナーのバラード。あれ今日中に仕上げておいて」


「今日中て…」


「サビんとこ、あれじゃちょっと曲が間延びする。
もうちょっとだけ工夫して」


「あー、あそこか。
確かにそやな。
わかった。
ほなスタジオ入るわー」


そう言って立ち上がると、相原君はひらひらと手を振って、スタジオへと戻って行った。


キョウセイと急に二人きりになってしまって、心臓の鼓動が勝手に速くなってしまう。


「じゃあ、早速出発する?」


「う、うん…」


突然の展開ではあったけれど、こうしてキョウセイと私は、二人で散歩に出かけることになったのだった。
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