もう一度抱いて
「永瀬、起きろ」


突然声を出すキョウセイに、ドキッと心臓が跳ね上がる。


既に起きていたから、私はすぐに瞼を上げて身体を起こした。


「二人とも寝ちゃったらしい。
もう5時過ぎてるよ」


「えっ、ホントに?」


わざとらしい声が出てしまい、汗が一気に噴き出してしまう。


チラ、と。


キョウセイの方を見ると、彼はいたって普通の顔をしていた。


私はさっきのキスで、ドキドキが止まらないというのに。


涼しい顔しちゃって。


この様子じゃ、私が気づいてるとは全く思ってないみたいだな…。


気づいてるよって言ったら、驚くかな…?


なんだか腑に落ちないまま、私とキョウセイはスタジオを後にした。
< 196 / 479 >

この作品をシェア

pagetop