もう一度抱いて
「わ、私はいいよ。遠慮する」


「えーっ?どうしてー?」


だって…。


磯村君にはもう会いたくないんだもの。


彼の姿を見たら私…。


「小山君をあらためて里桜に紹介したいのよー。一人じゃ行きづらいし。
お願いっ、里桜」


両手を合わせて、必死に懇願する亜美。


「う~ん…」


「ね、里桜~~~」


亜美ったら、瞳をウルウルさせちゃって。


私は昔から、亜美の必死さに弱い。


「ん…、わかった…」


「やった~~~。
一緒に行こうね~~~」


無邪気に笑う亜美。


その笑顔につられて口元が少し緩んだけれど。


でも、内心複雑な私だった。

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