もう一度抱いて
「まぁ…、じっくり考えてみてくれへん？

キョウセイとのこと。

俺は、朝田さんのこと信じてるからな」


俺がそう言うと、朝田さんはフッと笑った。


「その言い方…。なんだか殺し文句ね」


朝田さんの言葉に、俺も笑った。


しばらくして、俺らはカフェを後にした。


外はもうすっかり暗くなっていて、朝田さんとはカフェの前で別れた。


朝田さんの後ろ姿を見送る。


その後ろ姿は、むっちゃ綺麗や。


今までに見たどんな朝田さんより綺麗に見えるのは、気のせいやろか？


別に彼女を救ったろとか、そんなおこがましいことがしたかったわけやないねん。


彼女も言うてたように、同情や下心なんか抜きにして、対等に接してあげたかったんや。


真っ直ぐな思いを届けてあげたかったんや。


きっとそういうんを、彼女はずっと求めてたんちゃうかなって。


なんとなく、そう思ったから。


自分のこと、好きになれるとええよな。


手首なんか切って人の気を引くんやのうて、あの人の魅力に自然と人が惹きつけられるようになったらええなと思う。


きっと、そうなれるやろ。


意外と、いい瞳をしとったから…。

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