もう一度抱いて
その後、結局私はみんなに押し切られてしまい、とりあえず次のボーカルが見つかるまでの繋ぎということで、話がまとまってしまった。


話が決まると、みんなでアドレスの交換をし、私は磯村君のアドレスを手に入れてしまった。


なんだかすごく複雑だった。


あの日の出来事…。


磯村君は全然覚えていなくても、私はしっかりと覚えていた。


彼の姿を見ると、あの夜のことがどうしても頭をよぎってしまう。


彼の細い指を見るたびに、唇が動くのを見るたびに、あの日の感覚が蘇ってしまう。


それくらい、彼との夜は私の心と身体に深く刻まれていた。


それだけならまだしも。


彼は京香の彼氏。


そのことが、私をひどく傷つけていた。


これから私、どうなってしまうのだろう。


そう思うと、憂鬱で仕方がなかった。

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