もう一度抱いて
前のバンドの最後の演奏が終わり、私達はそのバンドのメンバーと入れ替わるようにステージへと足を運んだ。


少し日が傾きかけていて、ステージを照らすライトが少し眩しく感じた。


全員がスタンバイすると、相原君がバンドの紹介を始めた。


相原君は人気があるのか、キャーという女の子達の歓声が聞こえて、ちょっと驚いてしまった。


「……それでは聴いてください。

あの日のキミに」


相原君の合図で、小山君がスティックを叩いた。


1曲目の演奏が開始される。


指が動くか心配していたキョウセイだったけど、1ヶ月練習してないとは思えないほど、スムーズな出だしだった。


問題は私だ。


私は前奏の間、みんなの顔を一人一人じっと見つめた。


みんな笑顔で見つめ返してくれる。


舞台袖の亜美にも目を向けると、亜美が大きく手を振ってくれた。


大丈夫。


私は歌える。


みんながついているんだから!


私はマイクを手にし、大きく息を吸った。

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