もう一度抱いて
「どうした…?」


変な声になった私に気づいた磯村君が、演奏を止める。


私は涙が流れないように、必死に天井を見て堪えた。


大丈夫。


こうしてれば、きっと涙は止まるはず。


必死に呼吸を整えていた、その時だった。


「永瀬…」


中低音の優しい声が、部屋に響いた。


ど…うして…?


いつもは私の事、アンタって呼ぶくせに。


なんでこんな時に限って…。


「泣きたいんだろ?」


え…?


私は視線を天井から磯村君へと移した。


直後、ドクンと心臓が跳ね上がった。


だって。


磯村君が。


今までに見た事もないくらい、優しい顔をしていたから…。

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