予言と過去



「やだなぁ、敬語なんて良いよ。」


「ですが……。」


「普通に考えて、僕のが歳下だし、地位は下だし、本来なら僕が敬語 使わなきゃ いけない立場だよ。」


「確かに……。」



思わず苦笑すると、リーは 開けっ広げな笑みを浮かべた。



「だから敬語は無し! ね!」



その言葉に頷くと、リーは ふっと真顔に なった。



「リホお姉ちゃん、疲れてるの?」


「え?」


「前 見た時よりも、表情が硬いもん。」


「前 見た時って?」


「リホお姉ちゃんが巫女に なる前。僕、優しそうな人だなぁって思ったんだもん。」



それを聞いた瞬間、今迄 押さえ込んでいた涙が、ぽろりと零れた。



「え!? リホお姉ちゃん どうしたの!? 僕の所為!?」



その言葉に、ふるふると首を横に振る。



巫女に なってから、司祭達は無感情だった。私の事を全く見てくれず、巫女に対する態度として適切なものを選択するだけで、私の気持ちは考えてくれなかった。



だから、私を優しそうな人だと見ていてくれて、私の事を心配してくれて。



とても とても、嬉しかったんだ。

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