禁域―秘密の愛―【完】
巧が言っている意味。
ーーーーそれは、もし桜庭家と折り合いがつかなかった場合………つまり巧がその孫娘と付き合うことになり私と別れることになった場合………旅行に行くということだ。
最初で最後の旅行…………。
「………っ」
なんて残酷で………そして、想いの詰まった約束なんだろうーーーー。
「瞳………俺は、お前が好きだ。どうしようもなく………好きだ。例え、そうなったとしても………それだけは忘れないでくれ………」
「っ………」
分かってる………分かってる。
巧は………今までも、私に充分過ぎるほどの気持ちを与えてくれたから。
「私も………好きだよ。大好きだよ……離したくないよ……私だけの巧なのにっ………」
「瞳………」
「だから……旅行なんて、行きたくないよ………」
「ああ……分かってる。もう少し………答えがでるまで待っててくれ。瞳………ごめんな。辛い思いをさせてばかりで………ごめんな………」
「………っ、巧っ………」
巧は……何度も私に謝ると、私の涙を手で拭ってくれる。
私だって、巧にこんなにも謝らせたいわけじゃないのに………涙が止まらなかった。
運命はとても残酷で………、私はこのどうしようもなく悲しい気持ちをどう扱えばいいのかわからなくて。
蝕まれてゆく想いを、胸に抱えながら
私は巧の隣で泣いた…………。