禁域―秘密の愛―【完】
ーーーー桐谷家に籍を変えたのも元々はお母さんのためだったよね………。
優しい………優しい巧。
本当に優しくて………不器用だけど、その心はあたたかい。
今もどうしようもないくらい………巧のことが好きなのに。
そんなあなたを………離さないといけなくなるかもしれないなんて………。
「ああ……」
巧と、不意に………視線が合う。
私達は………、自然とまた唇を重ねていた。
今度は………さっきみたいに乱暴なキスじゃない。あたたかい、慈しむようなキス。
「離れないと………いけなくなるかもしれないんだね………」
こんなにも………好きなのに。
それさえも許されないかもしれないなんて。
そんなサダメだなんてーーーー。
「………瞳」
「ん………?」
私は、涙がこぼれそうになるのを抑えて巧の顔を見上げた。
「旅行に………行かないか。二人で」
「え……?」
旅行………?
どうして、いきなりそんなことを……?
「………お前と一緒にいられるように、何とか婚約を回避できるように………俺は何でもしてみせる。けど………ベストを尽くしても、無理だった時には……最後に、二人だけの特別な記憶を作りたい」