ディスオーダー【短編集】

 ただの好奇心か、それともつまらない同情心か、私にはどうでもいいいことだ。

 仮にそれがなんにせよ、私が彼に話し掛けた事実はなくならない。


「どうしてあなたは喋らないんですか?」


 相も変わらず彼は黙ったままで、私を睨むように見つめている。


「教えたくないことなら別に構いません。無理に聞き出そうとは思いません」


 どうせいつものように無視をされておしまいなのだろう。

 彼は黙って、睨むように私を見つめているだけなのだろう。

 しかし。

 彼は私の目をジッと見つめたかと思うと、のそりと動き出し、服の中から紙とペンを取り出した。
< 40 / 100 >

この作品をシェア

pagetop