眠り姫はひだまりで【番外編】


「俺ね、料理とかお菓子作るのとか、好きなんだ」


大粒の涙を流し続けるあたしを、裕也くんは目を細めて見つめる。

「男なのにそんなの引かれるかなって思ってて。でも、ミオちゃんは俺の作ったもの美味しそうに食べてくれるから、凄く嬉しかったんだよ」

…そーだよ。

だって、美味しかったし。

まだ付き合っていない頃、裕也くんのお家に招かれては彼の手料理を食べた。

全部、美味しかった。

何より、ばくばく食べるあたしを、裕也くんは嬉しそうに見てくれたから。

普通、あたしが手料理を振る舞う側のはずなのに。

…このままのあたしでもいいよって、言ってくれてる気がした。


「ミオちゃんが可愛くないなんて、思ってないよ。俺の料理喜んで食べてくれてる姿、可愛いなって思ってた。知ってる?」


ふるふると首を横に振る。

…知らないよ。

そんなの、知らないよ。

涙が止まらないあたしに、裕也くんが一歩近づいてくる。



< 44 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop