俺しかいない
フォークダンスなんて別に口実で、ほとんどがカップルでイチャイチャするための時間だ。
だから相手がいないってことは彼女、または彼氏がいないってこと。
でも、相手のいない者はいない者同士でまた恋が始まるかもしれない。
ゆったりとした音楽に合わせて、変化する桜の表情に思わず見とれてしまう。
そんな俺を見て、にこりと笑う桜。
この子は何を考えているんだろう…───
多分俺のことなんか、男として見ていないんだろうな。
フワッとしたせっけんの香りが俺の気分をおかしくし、サラサラの髪が俺を誘うように揺れている。
突然、抱きしめたくなる衝動に駆られるが、今の俺にそんな度胸などない。
白く小さな手は、俺の手の中にすっぽりとおさまっていた。


