花びらの舞う冬





朝、目が覚めれば夢の記憶は薄れるものの、
彼女の声だけは頭から離れなかった。



「だいくん。」


夢の中ですら俺は記憶障害のままで。

彼女がなんなのか、わからない。


でも、きっと俺は彼女を知っていて、
とても大切に思っていた気がするんだ。


────夢の中で俺は手を伸ばす。

記憶はないくせに。誰なのかも分からないくせに。

    分からないくせに。


俺は手を伸ばすんだ。でも、そのあと────








< 6 / 11 >

この作品をシェア

pagetop