『華國ノ史』
 出発の朝、身支度を終えたセブンはピエロの横に並び皆に挨拶をする。


 父はセブンに夜通しかけて作りかけていた上等な皮靴を完成させ贈った。


 母はお金を多めに渡し、セブンの好きなローストチキンサンドを持たせた。


 祖父は城勤めしていた時に使っていた魔除けの指輪を加工してネックレスし、首にかけてくれた。


トール
「心配すんな、俺もすぐに軍団入りしてお前を助けてやるよ、あとこれ」
 
 
 トールは柄に銀の装飾を施した短剣を渡した。

セブン
「でもこれトールの…」

 それはトールの一番の宝物だった。

トール
「ずっと欲しがってたろ?」
 
 セブンは泣きながらトールにしがみついた。


トール
「いいか?俺達兄弟は強い、お前も俺達兄弟の名に恥じないように生きろ。

 
 でもお前はチビで弱いから、なんかあったら俺に言え。
 
 
 助けてやるから、な?」


「マッチョは?」

祖父
「俺には関係無いってさっき出ていってぞ」


「あいつめ」

トール
「そんな訳ねーだろ、ほら」

 トールが指差した方向からマッチョが必死で走って来た。


マッチョ
「おいっチビ、おら」
 
 マッチョが差し出した袋にはお菓子が沢山入っていた。
 
 村中かき集めて来たのだろう。

マッチョ
「大事に食えよ?
 
 俺が先に戦争に出てお前の勉強を無駄足に終わらせてやるよ」

 
 セブンはマッチョのお腹に鼻水をつけながら抱きつく


ピエロ
「行こっか?楽しい冒険の始まりだぞ!」

 
 セブンは思い荷物を担ぎ、泣きながらピエロの後を追った。

 
 何度も何度も後ろを振り返りながら、よたよたとセブンは去っていった。

 
 トールは何も言わず口笛を吹き、空を見ながら小屋から離れて行き、マッチョは「これで子守りしなくて済むぞ!」
 
 
 と言いながら目を真っ赤にしてトールとは反対側に向かった。



「強情なやつらだな」


「本当に、ここで泣けば良いのに」

祖父
「人前で泣くなと教えた。
 それが男だ。
 セブンもそのうち逞しくなる。
 しかし良い兄弟に育ったもんだ」

 三兄弟は暫し別れる事になった。

 セブンは魔法都市に向け、皆に見送られながら丘に建つ小屋を後にしたのであった。
 


 
< 12 / 285 >

この作品をシェア

pagetop