『華國ノ史』
 大陸東では二人の王子によって激戦が繰り広げられているそうであったが、

 西の三日月城塞は平和そのものであった。


 共同生活をするうちに顔見知りは増え、

 セブンもまた城塞指揮官という立場上新たな知り合いが出来た。


 初めて打ち解けたのは鉄鎖傭兵団の団長ジェノスであった。


ジェノス
「うおっ殺戮道化がいるじゃねーか」

ピエロ
「やー傭兵団長」

セブン
「知り合いですか?ジェノスさん」

ジェノス
「知り合いも何も有名人だろこいつ」

ピエロ
「まーこんな格好だからね」

ジェノス
「ウルブスといい道化といい、お前本当は王族かなんかか?」


セブン「そういわれても」

ジェノス
「その腰の二本は良さそうだな、飾りか?」

セブン
「そんな事はないですよ」

ピエロ
「セブン、一手合わせてみなよ、

 彼は強いよ?」

セブン「お願い出来ますか?」

ジェノス
「いいぞ!その代わり魔法は禁止な?」

 ジェノスもまた二刀使いであった。

 
 彼が使う剣は通常の剣よりも若干短く、幅が広めの剣である。

 
 彼は腰からそれを引き抜きクルクルと回して身構えた。

 
 セブンは刃こぼれしない、頑固者の剣を抜き構えた。

ジェノス
「なんだ、二本使わないのか?」

セブン
「強化魔法が使えないんで、今の腕力じゃ貴方の相手にならないです」


ジェノス
「一本でも同じさ、いくぞ!」

 
 ジェノスの戦闘スタイルは速攻とトリッキーを合わせた剣術であった。

 
 ウルブスとは違う剣筋にセブンは防戦一方になる。

 
 目まぐるしい両剣の襲来に気をとられていたセブンにジェノスの蹴りが入った。


 セブンは吹き飛ばされ、地に伏せ咳き込んだ。

ジェノス
「ここまで防ぐとはな、しっかり鍛えてるじゃないか。


 でも戦場なら死んだぜ?」

ピエロ
「戦場じゃあこういう奴もいるぞ、セブン。

 剣術だけじゃなく、体術も使ってくるんだ」


セブン
「勉強になります。体術か…二刀流も凄いな、

 良かったら教えて貰えないですか?」

ピエロ
「教えてやれよ、ジェノス先生」

ジェノス
「先生か、悪くない。

 いいぞ、朝の練兵でみっちり教えてやる。

 簡単に死なれちゃ困るからな。


 神に頼る非力な野郎の鼻をへし折る自力を身につけろ。


 自分で身につけた技は決して戦場で己を見放さず、

 期待を裏切りはしないからな。


 神のように試練を与えるだけじゃない、

 技ってのは先に試練を受けその報酬として身につくんだ」


 理にかなったジェノスのストイックな考えはセブンには新鮮であった。

 
 その日からセブンはジェノスとも師弟関係を結ぶ事になったのである。

 





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