『華國ノ史』
 この一騎討ちを尻目に煌皇軍は撤退していった。

 しかし、一人、それを最後まで見守るのはボーワイルドであった。

 彼は決着を見届け、馬に鞭を入れた。

 ウルブスの亡骸に駆け寄るカピパラ寮の同期生達は入寮した当初の面持ちで泣き叫んだ。

 ボーワイルドも泣いた。

 その才能を聞きつけ育て、将軍にまでなったキュバインは自慢の息子同然であった。

 両者は悲しみに暮れる。

 王都は落ちたも同然であったが、体裁は守られた国。

 王都を落としたも同然であったがが、被害はそれ以上であった国。

 そして、古き英雄を失い、新たな英雄達が生まれる。

 奇跡の敗退戦を繰り広げ、王を、王都を救い、煌皇の策を砕いた者達。

 全滅したはずの生還者。

 それを率いる歴戦の勇士ウルブスの技と意志を継ぐ若き騎士。

セブン
「この剣に制約する。

 ウルブスに誓う!

 滅ぼされた魔法都市に約束する!

 死んでいった友にも、失った華國の民にも、その命を奪った煌皇の兵にも、華國兵にこの命を掛ける。

 必ず、必ず!戦争を終わらせると!」

 多くの悲しみは、青年を強い男へと成長させた。
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