『華國ノ史』
 華國は王都襲撃と獅子王子の死で大きく揺れていた。


 広めたのはクラッシュである。


 彼はトリートの命を受けると直ぐ様馬に乗り込み大陸北を駆けた。

 
 全ての街と砦、村を回り話を広げていく。

 
 多くの人々は考えを巡らせた。

 
 魔法都市は消え、西と東の関所が突破され、王子が死に、

 都は灰となり、英雄も魔法部隊三強も多くが死んだ。


 最早敗戦の色が濃厚だろうと考える者もいた。

 
 だが、それ以上の期待を膨らませるべくクラッシュは弁舌を振るう。

 
 西での奇跡的な防衛戦、王を救った英雄達は未だに健在である。

 
 リンスの奮闘に、敵の戦力は大きく削がれ、

 彼の意志を継いだ執念の狼の燃え上がる復讐心。

 
 五大将軍は残り二人となり、敵の威勢を大きく奪った事。


 クラッシュの話は酒場で、広場で話され、噂になり、多くの者を悩ませた。

 
 人々は議論を交わし、生活の会話はそれ一色になっていった。


「王都が落とされた今、華國に未来はないんじゃないか?」


「いや、話じゃ山脈勢力を取り込んだ第二王子がやるっていってんだ。やるだろう?」


「しかし、魔法使いが育たんと将来的には」


「十二士の話は聞いてないのか?

 三強部隊の精鋭を集めた新設部隊の活躍を」

 
 さらにクラッシュは話を広げる。

 
 最早南には大部隊を乗せられる船は無く、

 南に戦力を集中させる事が出来る事。

 
 どんな身分の者でも、戦列に加われば報酬があり、

 手柄次第では身分と領地を約束すると話した。

 
 同時にクラッシュは王印を付けた書簡を領主に配っても回った。

 
 これにより、華國は先の戦いにも増して激しく動き出すのであった。

 



 
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