『華國ノ史』
大陸統一大戦期
 これを読む後世の者は信じられぬであろう。

 大陸が南北に別れ蓄えた全てを吐き出し死力を尽くして覇を争ったこの戦いを。

 
 全てが史上初の戦いであった。

 
 死者も、被害も、そして流されたあの多くの血は見た者にしか思い起こす事は出来ない。


 それまでの関所等の戦いでは無く、大軍と大軍が荒野を掛けて激突する様は大地に眠る者をも呼び覚ます、

 正に大戦であった。

 
 天も地もこの戦いの行く末を見ていたであろう。

 語られぬ話も多くあった。

 語る話が多すぎたからだ。

 
 だが私は知っている。

 
 全滅した勇敢な戦士団を。

 
 墓も持たず朽ちていく勇者を。

 
 彼等は皆、戦いの行方を信じていた。

 
 その顔に恨めしさは無く、戦場では考えられぬ清々しい顔であった事を私は覚えている。


 煌皇国将軍
 ボーワイルドの証言より
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