好き嫌い。

その3

「どんだけ好きでも、どんだけ離れたくなくても、あの言葉が邪魔してっ」


腕を引かれきつく抱きしめられる。


「もう側に居るのすら辛くてっ、逃げなきゃ苦しくて…」


抱きついてもいいのかな…。


ゆっくりと大きな背中に腕を回す。
届かない程広い背中。


「ミノリ…ゆっくり話したい。誤解してることもあるだろうから…時間貰えないか?」


頭ひとつ…いや、ひとつ半くらい上から低い声が降って来る。

「うん…あ、バウ…」


ほったらかしにしちゃってた!


振り向くと、ふあ〜っと大きな欠伸をしておすわりしているバウがいた。


「利口だな、お前。」

バウの元に歩き寄るとグリグリとバウを撫で、リードを手に取る。

「ミノリ」

反対の手…左手が差し出される。


「え…」


「手。繋ごう。」


震える手をゆっくり差し出す。
ギュ、と握られた大きな手。あったかくて離したくない。


話を聞いて、お終いになったらどうしよう。


でも…ホントに好きでいてくれたの?

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