好き嫌い。
「か…彼女とかいたくせに…」


小さな声で反論する。
どう説明するの、それ。


「付き合ってないよ。勝手に彼女とかいって付きまとってたんだ。
…ま、拒否しなかった俺がいけないんだけど。めんどくさかったんだ。
ミノリ以外、目に入らなかったから。」


チュ、と音をたててキスの雨が降って来る。

頬に。


首筋に。


「どう言っても言い訳にしかならないからさ。あの頃の俺はいいかげんだったから。

目の前からミノリが消えて。

ミノリの友達に聞いても教えてくれなくて。


もうダメかなって思ってた。


それがさ。アキって人が俺に会いに来て。
ミノリが今でも俺のことを好きでいてくれるって言われて。

どうしたらミノリの居場所教えてもらえるのか、何度も何度も訪ねた。


そしたら、結婚式の写真を撮ってくれって言われてさ。

なんだそれ、って思ったら結婚式の時にミノリが帰って来るって。
きっかけになるよって。」

…アキちゃん…まったくもう。


「アキちゃん、そんなこと言ってたの?」

「ああ。でさ、帰ってきてるなら少しくらい顔見れないかなと思ってあの河川敷歩いてたんだ。

まさかいるとは思わなかったけど。」


ギュ〜っと強く抱きしめられる。
そのままゆっくりとソファに横たわる。

え…これって、まさか、その…。


「ミノリ。俺のものになって。」


見下ろしてくる大好きな人。

でも…でも。

「あたし…また帰らなきゃなんないよ?
ここには住んでないから…」


そうだ。


たまたま帰省してるだけ。


連休明けには戻らなきゃならない。


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