好き嫌い。
「あ、お母さんにメールしなきゃだ。」


あれから2時間…いや、3時間は経過している。


遅くなるならメールしてね、って言われていたのを思い出したのだ。


「お母さんに?なんて?」

…なんてメールしよう。

遅くなります?お泊まりします?

「遅くなるなら連絡してねって言われてたの、忘れてた。どうしよう、今から帰ればまだ大丈夫かなぁ。」


どうしたらいいのかわからず、つい思ったことを口にしてしまった。


「ミノリ、帰るのか?」


帰さない、とか言ってくれることはないだろうなぁ。


それに。


今日は特別…一緒に居たい。


ベッドの中、くるりと反転した康太は、実里の体をぎゅっと抱きしめ、耳元で囁いた。


「今夜は一緒にいて欲しい。」

真っ直ぐに実里を見つめて言う康太。
昔と変わらない、真っ直ぐな瞳。


「ミノリの誕生日だろ?俺と一緒にいて欲しい。」


…知って…?


見開かれた実里の目には、嬉しそうに笑う康太が映る。


「知らないわけないだろ。小学生の時から知ってる。おめでとう、って言うのは初めてだけどな。」


もう28だ、なんて思ってたけど。


知り合ってから16年は経ってるんだなぁ。
まだ16年?

もう16年?

これからの時間の方が長いのかな。


「いいの?」

照れくさい。
だけど、帰りたくなかった。


「もちろん。」


ちゅ、とキスされて受け取る答え。


そのままキスの雨を降らせた康太が、実里の身体を求めたのは仕方が無いのかもしれない…。



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