好き嫌い。
2時間ほどして。


カラン、とドアベルが鳴り来客を知らせる。



「康太…」


青ざめた顔の康太が立っていた。
硬い表情、でもその目は実里を真っ直ぐに捉えていた。


「ごめん‼︎」


いきなりガバっと身体を折り土下座をする康太。


「出来心とか遊びとか、言い訳なんかしない!
俺が悪い、俺が悪いから!
だから他の男のとこになんか行くな!
頼む!頼みます…‼︎」



ひたすら頭を下げる康太に近寄り、しゃがんでその肩に手を置く。


「未遂?それとも…」

「未遂‼︎」


ひたすら必死な受け答えをする康太が可笑しくて、つい笑いがこぼれた。


「ホントかな。あたし、康太がお盛んだった時を知ってるからなぁ。
そんな康太は大嫌い。」


笑いながら言うと顔を上げた康太は引きつっていた。


「大嫌いよ。

冗談じゃない。浮気して許せる人なんていやしない。
許せるとしたら、愛情がないって場合よね。


何年間康太を好きだったと思ってるの⁉︎

これまでだってあなたが他の女の子と一緒のところを何度も見てきたわ。

その度に辛くて悲しくて、嫌われてるって諦めようと努力してきた。


出来なかったから、また辛い思いしなきゃなんない!」


立ち上がると関家の側に寄る。


「大嫌い。」

「ミノリ⁉︎」

関家の腕にすがりつくように抱きつくと、震える腕に力を込めた。

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