伝わらない、伝えられない


コンビニへ入るとあるコーナーでお目当ての物を手に取る。


それは棒がついてるタイプのチョコアイス。


今は3月半ばで、春へと刻々と足を向けてはいるけれどまだ寒い。



だけど、アイスって無性に食べたくなる時あるんだよねぇ。



他の商品と一緒にアイスをかごの中に入れるとお会計に向かった。


うーん、チョコとチョコクッキーで迷いに迷った挙げ句結局二つとも買ってしまった。


外にあるゴミ箱に袋を入れてアイスを口に含む。


もう一本は急いで帰って冷凍庫に入れちゃえばいいよね?


アイスを味わいながらも、ポリ袋に入った方が溶けてしまわないようにと歩く足を少し速める。


そこで反対側から歩いてくる人物が目に入った。



数人の男子と歩いているのは紛れもなく悠斗で…


何故こうも関わりたくない時に現れるのか。


逃げ出したい衝動に駆られつつもここは一本道。


あたしと悠斗の前後に曲がり角は残念ながらない。


やむを得ず気付かれない事を祈りながら俯き加減で歩きはじめた。



「ちとせ?」



そんなあたしの願いなど叶うはずもなく、十数秒という短い時間で気付かれた上に声を掛けられてしまう。


あたしは俯いたままの状態で 顔を歪ませた。


でもそれは一瞬だけにすると、今度は表情を作って前を向いた。


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