その苦くて甘くてしょっぱいけど…
僕は詰まりながらも、その質問を投げかけた。

聞いてみたかった。僕は幸せな家庭で育ったのだろうか?

父は最初微笑んでいたがそれから少しして苦い顔になり静かに口を開いた。

「単純な幸せだという気持ちとは違う。でも、だからと言って不幸なわけじゃない。

あのままほのかをほっておくことは俺には無論できなかっただろう。

結果的に眞人がいなくならなければ

お前やいつきと4人で家族になる未来はなかったわけだし…

毎日ほのかがこの世にいてくれて、一緒の時間を過ごし、一緒に眠る。

何気ない日常の繰り返しをできたことは本当に幸せだなと思う。

ただこれがいつまで続くかわからないが…」

「母さんそんなに悪いんですか?」

「いや、すぐどうのこうのという心配はないと思う。

何となく体調が悪いだけじゃなくって、あれから色々調べて早期発見できたから、

おそらく大丈夫だろうとは言われている。

とはいえこれから手術も控えているし、なにせふたを開けてみないと

わからないものだし…

そして何より再発するのがコワイな」

「そうですか…」

「とにかく俺はほのかをこれからも守っていく。

お前にも守るものができるんだからこれからはそっちを大事にしろ」

「はい」

「いい加減飲んだらどうだ?」

「はい」

僕ははにかんで父に酌をしてもらい、少し早い祝い酒をお互いに酌み交わした。


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