危険なキス
 
聞こえてくるのは、ツーツー…という電子音だけ。
あたしは力が抜けるように、携帯をおろした。


涙が勝手に込み上げて、
瞼に溜まりきれないものが、滴となって零れ落ちる。


「……っ」


それを先端とし、次々と涙が溢れてきた。



けっして、好きになったんじゃない。

一度抱かれたからといって、好きになるほど単純じゃない。


ただ悔しかった。


自分から吹っ掛けたことだけど
中途半端に投げ出されたような気がして、それがすごく悲しかった。


「嘘…つきっ……。
 またな、って言ってたじゃんっ……。
 先生の嘘つきっ!!」


投げられた枕は壁に当たって落ち
あたしのすすり泣く声だけが部屋に響いていた。

 
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