危険なキス
「柊?なんで泣いてんだよ……」
「…っ」
泣きだしたあたしを見て、楠木が心配そうに顔を覗き込んでくる。
あたしは何も言葉にできず、ただ首をぶんぶんと振った。
好き……
楠木のことがずっと好きだった。
本当はずっとずっとそんな言葉を言われるのを夢に見てた。
全然女の子っぽくない自分だけど
いつかそんな少女マンガのようなことを言ってくれる人が現れるんじゃないかって……。
そしてそれが
楠木だったらいいのに……って。
だけど……
(紫乃)
さっきからずっと
頭の片隅にいるもう一人の男の人。
あたしの腕を引っ張っている。