危険なキス
3時間の予備校授業は終わり、帰りの身支度をする。
外に出ると当然のように真っ暗で、お腹も減っていた。
やっぱ、人が多いなー。
今日は金曜日。
街は飲みに行く大人が多く、いつもの予備校帰りよりもずっと人でにぎわっていた。
数年後、あたしはこの人たちみたいになるのだろうか。
大学を出て、社会人になって
金曜日には同僚や先輩たちなんかと飲みに行ったりとか……。
そんな自分がまるで想像つかなくて
このツンツンとした性格を、まずどうにかしないとな、と自分に苦笑した。
その時……
「ねー、いいでしょ?」
「そうだなぁ……。じゃあ、何してくれんの?」
どこからか、男女の話し声が聞こえた。
話し声なんて、いたるところから聞こえるのに、やけにあたしの耳に入ってきた一人の男の人の声。
ドクンと波打った心臓を抑え、あたしはゆっくりと振り返った。