危険なキス
16章 先生の気持ち
とは言ったものの、あれから先生からのアクションがあるわけでもなく、学校のある日は着々と過ぎていた。


学校の授業を受けて
図書室で勉強をして
予備校へ行けば一日が終わる。

学校でも、特別湯浅先生に関わることはない。

そしてあっという間に、金曜日になってしまった。


あたしは迷ったものの、勇気を出して携帯を取った。


しばらく機械音が聞こえたあとに、それが止まる。

そして……


《もしもし》


受話器越しに、応答する声が聞こえた。


「あ、あのっ……ひ、柊ですっ」
《分かってる。前にもかけてきたことあんだろ》
「あ、はい……」


電話を出た相手は、湯浅先生。


前にかけたのは、先生が家庭教師を辞めた日。
お母さんから聞いた電話番号を、ずっとメモリーに登録していた。

あれからしばらくは一切出てくれなかったので、今回も出てくれるかすごく不安だった。
 
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