危険なキス
19章 先生の過去
 
「神田先生、いますか……?」


唇を噛んで、神田先生を呼び出す。

神田先生は呼び出された生徒があたしだと気付くと、複雑そうに笑ってこっちへ来た。


「数学の勉強道具持って、ついておいで」


言われたとおり、あたしは鞄ごと持って、先生のあとへついていった。



着いた場所は空き教室。

時間も時間なだけでに、校内にはあまり生徒は残っていなかった。


「カモフラージュのため、数学の参考書類広げといて。
 俺とまで、変な噂たったら嫌でしょ?」

「……はい」


よく気が回る先生。
そう思った。

神田先生は数学の先生。
もし誰かの教室を覗き込まれても、あたしが先生に数学を教えてもらっていると思わせればいいのだ。
 
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