危険なキス
 
駐車場に着くなり、あたしは帽子とサングラスを取り出した。


「何それ」
「変装用です」
「ぷっ……」


すちゃっと身に着けて振り返ると、先生は吹き出して笑った。


「なんだよそれっ……。どこぞの芸能人か?」
「だって!……またいつどこで、誰が写真撮るか分からないじゃないですか!!」
「そうだけどよっ……」
「あたしは……そんなことで、引き離されるのが嫌なんです……」
「……」


思わず俯いてしゅんとなると、急に下から先生が覗き込んできた。

その瞬間、


「…っ」


ちゅっと軽くキスをされる。


「可愛いこと言ったご褒美」
「なっ……」


先生は悪戯に微笑むと、一人車を降りてしまった。

あたしはまだドキドキしながらも、慌てて車を降りてついていく。


サングラスしててよかった……。

今の顔、絶対に見られたくない。

 
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