危険なキス
「それで、ボールをとろうとしたら、俺のほうが落ちちゃってさー」
「え!ほんとにっ!?」
ガヤガヤとざわつく食堂の中、あたしたちを囲っているテーブルも例外ではなく、二人の明るい声が響いていた。
「もう全身びしょ濡れよ。帰り、ちょーさみぃのな」
「あはは!楠木くん、おもしろいっ…」
相変わらず、楠木から話される自伝はバカなことばかりで、それにたいして麻衣子がお腹をかかえて笑っている。
そんな麻衣子の反応がよかったのか、楠木からは次々と会話が出てくる。
あたしにたいしてもよく話すな、って思ってたけど、
相手が話す子だったらもっと話すんだ……。
と、ちょっとだけ複雑な気持ちであたしは二人のやりとりを聞いていた。
「おい、お前聞いてる?」
「うん」
「うん、ってなー。相変わらず、柊は反応薄いよなー」
あたしの反応に、楠木は唇を尖らす。
反応薄いと言われたって……
これがあたしの性格なんだから仕方がない。