君が好きだから嘘をつく
そう言って私の手にTシャツをのせて、自分はダウンジャケットを着て携帯を操作し始める。
そしてエンジンをかけてエアコンをつけ、オーディオのボリュームを少し上げた。
きっと私が後部座席で気にせず着替えられるようにだ。
戸惑ったけど、後ろに移り着替えることにした。
手にしたTシャツに健吾の体温を感じて、なんだかすごく恥ずかしい。


これ・・・着るの?


たまらなくドキドキしたけど、やっぱり濡れたブラウスと下着が気持ち悪くて、健吾のシャツと自分のコートに着替えた。
でもやっぱり恥ずかしくて助手席に戻りオーディオのボリュームを戻して、照れ隠しに健吾に向かって

「Tシャツに人肌のぬくもり残ってる・・・何かエロイ」

って呟いたら健吾の目が点になった。

「そうゆうこと言うなバカ!」

呆れた顔で前を向くと、携帯をポケットに入れる。

「寒くないか?急いで帰るからな」

「うん、大丈夫。シャツごめんね、ありがとう」

健吾は優しい顔で微笑むと、車を発車させた。

雨はそんなに強く降らず、また景色を楽しみながらドライブの帰り道になった。
週末の為帰り道も混雑してアパートに着くのに時間がかかってしまった。

「雨に濡れたし、お風呂かシャワー浴びてお茶していく?」

「う~ん、微妙な格好だしな。楓も早く風呂入って温まったほうがいいよ。今日は帰るよ、ありがとな。またどこか行こう」

「うん、こっちこそ今日はいろいろとありがとうね。Tシャツ後で返すね」

「わかった。じゃあ、また月曜日な」

「ばいばい」

そのまま健吾を見送ってから部屋に帰った。

今までなら出かけた後は必ず部屋に寄ってお茶していくか、そのまま雑魚寝で泊まっていったのに、寄らずに帰ったのは雨に濡れたことだけじゃなく、やっぱり伊東さんのこともあるからかな?
久しぶりのお出かけすごく楽しかったけど、少し寂しい。
あ~、早くシャワー浴びて温まろう。

でも、エロイって言っちゃったけど健吾のぬくもりのあるTシャツ、やっぱり嬉しかった。

それは健吾に言えないけどね。
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