君が好きだから嘘をつく
健吾の好きな伊東 麻里さんは、私達の3歳年下で24歳、可愛い顔立ちに華奢な体型、みんなに優しく笑顔が印象的だった。

健吾はこの笑顔に心を奪われたらしい。

私達営業部とは課の違う伊東さんとの出会いは、営業と総務の飲み会・・・いわゆる合コンだったそうだ。
彼氏がいるのに参加した合コン。
健吾が言うには伊東さんは総務課の飲み会だと思って参加したらしいが、『どうなのか?』・・・なんて私は邪推してしまう。

私も嫌な奴だな。

「うん。何でだろうな。付き合っている奴がいるなら諦めるべきなのにな。分かっているのに、惹かれるんだよな。」

惹かれるね・・・そう健吾は本気だ。

伊東さんと出会って、少しずつ仲良くなっている。仲間を交えてだが、時々食事にも行っているらしい。

「諦めなきゃって言いながら、諦める気なんてないでしょ?」

私の言葉への答えはなく、健吾はタバコを一口吸って呟いた。

「27にもなって片思いして悩んでいるなんてさ、俺情けねぇよな・・・」

    

    -私も27歳になっても、片思いでずっと悩んでいるよー



健吾に言えるわけもなく、

「そんなことないよ。伊東さんのこと本気で好きなんでしょう?私は応援しているよ」

なんて嘘をつく。


一番大切で大好きな健吾に嘘をついている私こそ情けない・・・

健吾と別れてアパートへの帰り道、ため息交じりに空を見上げる。


    ーもう、好きだって言えないよねー



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