神の戯れ


 「この戦い、人と異能のどちらが勝利を修めると思う?」


間近な太陽を見つめ手を翳しながら問うと、フェルスはさも当たり前のような顔をして応えを出す。




 「それは異能に決まってるじゃない。人が異能に適う筈がないでしょう?」


 「確かに異能は人より強い力を持っている。しかし、必ずしも異能が勝つとは断言できない」


それは何故?と疑問を抱くフェルスに応えるようにアンコルは言葉を続ける。




 「人は無力で弱いが、弱い者であるからこそ互いに力を合わせ協力し合い、組織でもって強い力を持つ事が可能となる訳だ。対し異能は力を持つあまり群れる事を嫌う。異能1人に対し、ある程度の力を持つ人が多勢で挑めば勝敗はどちらに転ぶか分からないだろう?」


確かにそうだ。
幾ら弱い存在でも、数で圧倒すれば勝ち目はある。
異能が勝つ筈だなどと断言する事はできないのだ。




 「さて、この台本の無い物語の中、何が起こり誰が生き残るだろう。見当も付かないこの物語、とても楽しい事になるよう期待しているよ」


遠くを見つめるアンコルはその言葉を残し姿を消し、クスリと微笑むフェルスは翼を広げ飛び立った。




高く聳え立つ時計台の針が0時を差し時を刻む。


辺りに響く鐘の音はこの物語、戦いの幕開けを示すものだった。










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