神の戯れ


改めて礼を言おうと口を開くレノリアだが、ほぼ同時に同じ方向へと顔を向けた2人を疑問に思い言葉を止める。


殺気を身に纏い遠くを見つめるアスラに、深く溜め息を吐き一歩前へと出るフィノ。


そんな2人の様子にレノリアは眉を潜める。




 「彼女を連れて行きなさい」


 「何を言ってる。1人で相手するつもりか?」


 「仕方無いでしょう?怪我人を庇って戦うなんてそんな器用な真似、私にはできないんだから」


2人の会話を理解できずに居たレノリアだが、近くから聞こえた足音にハッとする。

追っ手の人間が直ぐ其処まで来ているのだ。




 「時間稼ぎなら俺が引き受ける。フィノは彼女を───」


 「無理よ。彼女がそう簡単に納得して逃げてくれるとは思えないし、抵抗する相手を私1人で連れて行けると思う?だから、貴方が彼女を逃がしなさい」


 「だが……」


 「ぐだぐだ言っている暇なんて無いわ。早く行きなさい」


 「…すまない、フィノ」


悩んだ挙げ句フィノにこの場を任せる事にしたアスラ。


彼は剣を強く握り閉め警戒するレノリアを軽々と持ち上げた。











< 53 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop