神の戯れ
急に足を止めた事に疑問を抱くレノリア。
何事かと口を開こうとするが、下から吹き上げた風に視線を下げ現状把握。
レノリアを抱えるアスラは絶壁の崖の上に立っていた。
「まさかとは思うが、此処を飛び降りる気か、君は?」
レノリアの問いにさも当たり前のように頷くアスラ。
その答えに顔をひきつらせ苦笑する。
「視界を閉ざしておいた方が良いだろう。怖いだろうからしがみついていても構わない」
「だ、誰がしがみつくか!こんな崖など怖くは無い!見くびるのもいい加減にしろ!」
「ハハッ、強情な人だ」
強気な態度に口元を緩ませたアスラはレノリアを抱え直し躊躇う事無く断崖絶壁から飛び降りる。
重力に従い落下する身体。
その速度は加速する。
耳元で風は唸り逆立つ髪は乱暴に靡く。
身を襲う恐怖に絶えるレノリアは目を瞑り、アスラの服を力強く握り締めた。